いかに会社を成長させるか考えたとき。現状の賃金の決め方が正しいものであるかどうか、頭を悩ませる方は少なくないと思います。
どれだけ時代が進んでも、なぜか年功序列的な考え方が根強く残っていますが、経営者サイドからすると能力に応じた給与制度こそが望ましいといえます。会社に貢献している人には正しい評価をして、相応の賃金を対価として支払うというシステムなのですから、能力に応じた給与制度ほど理にかなったものはないと考えられるでしょう。
資金的にフレキシブルな対応が多く要求される中小企業であれば、会社への貢献性が高い従業員に、より多くの給与を払いたいと思うのは当然だと思います。そのような会社としていくために、導入を検討すべきなのが「成果に基づく給与システム」です。
しかし、「成果報酬型給与システム」などのキーワードで検索した場合、職能給や職務給といったものが候補として登場してきます。これら2つはすごく似ているように思えますが、実質的にはまったく違うものです。
以下に職能給と職務給の違いについてご紹介してまいりますので、何か少しでも今後の参考となりましたら幸いです。
職能給とはどういうものか?
職能給とは、その人の職務遂行能力を評価対象として定められる給与を指します。仕事についての知識や、これまで取り組んできた仕事から得られた経験、職務に必要な資格や技能、リーダーシップやコミュニケーション能力などのヒューマンスキルなどを総合的に評価して職能給へと反映させていきます。
スキルを最重要視しているような言葉の響きとは裏腹に、OJTによって得られる知識や経験がカウントされやすいため、年功序列や終身雇用の考え方と大差ないのが実際のところです。このため、企業によっては職能給を基本給の中に含められている場合もあります。
しかし、従来型の給与制度はロスが大きいと判断しているのであれば、職能給を導入することでメリットが得られます。上でも触れているよう、職能給には年功序列的な考え方が根強いので、勤続年数が長くなればなるほど職能給は高く評価されがちとなります。この結果、従業員それぞれが「社歴を積む方が自分の得になる」と判断するため、離職率が低くなり、自社の業務に必要なスキルを持った人材を養成しやすくなる可能性が高まるためです。
また、スキルや能力によって評価されるので、やりがいを持って業務に取り組む環境となりやすいですし、優秀な人材を確保しやすくなるのもメリットとして考えられます。
上記のようなメリットを十分に享受するには、職能給を計算する際に何を評価するのか明確にしておかなければなりません。この基準が曖昧であると、従業員が自分への評価と他人への評価を比べたときのエビデンスが欠けてしまい、不満を持つこととなりかねないためです。また、どうしても若い年代ほど過小評価される傾向にあるので、その点についても検討する必要があるでしょう。
これらをカバーできないままであれば、職能給がモチベーションダウンのきっかけとなってしまいますし、一度、導入したものを後で撤廃しようとすれば、それもまたモチベーションダウンを引き起こす原因となりかねません。
職務給とはどういうものか?
職務給とは、業務の内容によって決まる給与システムのことであり、欧米では広く取り入れられている制度です。日本でいえば、パートやアルバイトの賃金こそ職務給そのものといえます。簡単な業務であれば時給は低めに、辛い仕事や難しいものであれば時給は高めに設定されています。経営者側からすると、会社への貢献性をそのまま評価できる職務給のほうが魅力的に映るのではないでしょうか。
職務給を導入するメリットとして挙げられるのは、給与の基準に公平性が保たれることです。給与を決める基準が明確であり、透明性があるため、それぞれが得ている給与に摩擦が生じにくくなります。また、担当する業務内容によって給与が決まるので、“それらの業務ができるようになりたい!”との想いが芽生えることもあり、従業員のやる気を刺激できるようになります。勤続年数や年齢、肩書などに関わらず誰もがやる気を持って業務を遂行できる環境は、その先の企業成長のためにもプラスの作用が働いていくことでしょう。
職務給を導入するメリットは大きいものの、導入に要する時間がかかり過ぎる点には注意しなければなりません。それぞれの仕事について、どれだけ価値のあるのか分析しなければなりませんし、その評価に応じた賃率が合理性あるものとして制度を構築する必要もあります。また、合理的な反面、他者が担当している業務を手伝ったとしても、自分への評価とならないことから、従業員間の連携が取れなくなるケースも想定しておく必要があるでしょう。