人事制度見直しが必要な理由
ビジネスの幅が広がり、スピード感が増すばかりの今日、過去の常識は今日の非常識となりつつあります。入社すれば一生安泰であるはずだった超大手企業が、大規模なリストラを行うというニュースを目にするのも珍しくなくなっています。それだけ各業界で新しい時代にフィットしようとする動きが盛んであることを意味しているといえます。これに伴って人事制度の見直しに取り組む企業も多くなっています。
過去、まるで新たなマナーであるかのように各企業が導入した能力給も、実質的には年功序列を繁栄させたものであるため、本当の意味での実力主義ではありませんでした。懐事情にいくらか余裕があれば別でしょうが、利益を上げ続けられる組織へと変貌させるには、会社の求める人物像に近い従業員には多く払い、そうでない従業員の給与は低く抑えたいのが経営サイドの本音です。これを実現するには、会社の人事制度を見直さなければなりませんが、やみくもに取り組んでも社内に混乱を招くだけとなってしまいかねませんので、セオリーを抑えていく必要があります。
人事制度見直しの目的を明確にする
まずは、その人事制度が会社の抱えるどのような課題を解決するためのものであるのか、人事制度見直しの目的を明確にします。そして、経営理念を各項目に落とし込んでいきます。その過程でもっとも従業員が気にするのは、評価制度・報酬(賃金)制度についてでしょう。適切な評価基準と賃金体系の整備は従業員個々のモチベーション向上にもつながりますが、人事制度が移行した場合、現状より賃金が下がる従業員も出てくるようであれば、後述する法律上の問題も出てきますので注意が必要です。また、気をつけなければならないのが格差解消です。働き方改革によって正社員と非正規労働者の賃金格差を解消するよう、同一労働同一賃金への意識が政府主導で高まっているため、従業員個々も注意深く会社側の対応を見守っているポイントとなってくるでしょう。同様に、高齢者の定年再雇用者への賃金についても働き方改革による影響をどのように消化するかが、これからの人事制度見直しの難しさとなっています。
人事制度見直しで意識すべき事とは?
SNSが隆盛を極めている今日、人事制度の改悪であると判断されれば、誰かがそれをSNSに投稿するなどして自社の評判に影響が出る場合もあります。しかし、そのほとんどが会社側がコンプライアンスを反故にした決定または対応を行っていることを起因としているので、人事制度の見直しについてもコンプライアンスを重視しなければなりません。
人事制度の見直しについて意識すべき法律は、従業員にとって不利益な変更を行う際に適用される労働契約法と労働組合法です。労働契約を従業員の不利な内容とするには、労働者の個別合意・就業規則の変更・労働協約の締結を経なければなりません。これらの手続きを経ずに不利益変更を行った場合、従業員が労働基準監督署などに駆け込むと是正勧告を受ける羽目となってしまいますので注意が必要です。
パソコンやスマホを誰もが操作できる今日、疑問に思う点があれば何でも調べることができるようになっているため、労働法上のトラブルは多くなってきています。しかも、労働基準監督署は立場の弱い従業員の肩を持とうとする傾向があるので、企業はしっかりとコンプライアンスへの対応を経ながら人事制度を見直す必要があります。
最後に忘れていけないのは、見直した人事制度がしっかりと組織にフィットしているかどうか見極めることです。その際には、人事制度を見直す目的とした内容が叶えられているか重視していきましょう。