ゼネラリストとは、業務について幅広い知識や技術を持っていて、社内のどのポジションに就いてもフィットできる人材を指します。対義語となるのはスペシャリストであり、専門領域に特化した仕事を行います。ゼネラリストとスペシャリストのあいだに互換性があるかどうかは議論が分かれるところですが、互換性を求めるのであれば個人のパフォーマンスは最大化できません。スペシャリストは自分の強みを最大限に生かせませんし、ゼネラリストが特定の専門分野で貢献できる内容に限界があるためです。
では、スペシャリストとゼネラリストのどちらを求めるべきかといえば、それは企業規模によります。ビル・ゲイツは迷うことなくスペシャリストを選ぶと答えたそうですが、そう言い切れるのは各ポジションにスペシャリストを配置できるだけの人件費を負担できる企業だけであり、中小企業の場合にはゼネラリストを大多数としたほうが組織はスムーズに回っていきます。
ゼネラリスト育成は簡単か?
悪く表現すれば、広く浅く業務を担当するわけですから、ゼネラリストを育てるのは簡単そうに思えるかもしれません。ゼネラリストに必須とされるスキルは「コミュニケーション能力」「視野の広さ」「行動力」の3つとされているのですが、それはどことなく曖昧に思えてきますし、誰にでもある程度備わっているものが並んでいるだけのような気がしてきます。しかし、ゼネラリストを育てるのはスペシャリストを育てる以上に難しいのが実際のところです。
スペシャリストの育成は専門分野の掘り下げという目的が明確だからこそ教育の方向も見えやすく、本人のモチベーションも維持しやすいのに比べ、ゼネラリストはそうではありません。スペシャリストをまとめ上げてプロジェクトの推進を図るゼネラリストは本人の資質が大きく影響してくるため、向き・不向きが明確であり、誰にでもなれるわけではありません。つまり、ゼネラリストを育てるには、その資質を持った人材のリストアップから始めていきます。
ゼネラリスト育成の方法
最近はタレントマネジメントという言葉でも表現されていますが、ゼネラリストとなるために必要なコミュニケーション能力と視野の広さ、行動力についてまずセグメント分けをします。その後、それぞれについてCDP(キャリア・デベロップメント・プログラム)を設定します。
※CDP(Career Development Program)とは、個々の社員のキャリア形成を、中長期的な視点で支援していくためのしくみのこと。
そのCDPは数年先のジョブローテーションも含めた内容とすべきであり、中長期的な視点で社員のキャリア形成をバックアップするものとします。年単位でキャリア形成を考え、社内のOJTだけでなく、社外のセミナーや講師の招聘(しょうへい)なども取り入れて、総合的にキャリア形成や能力開発を進めていくプログラムとすることで、ゼネラリストを育てる環境が出来上がっていきます。
会社を支えていくゼネラリストの育成へ
スペシャリストのほうがベターであると個々は考えがちですが、雇う側からするとゼネラリストほど貴重な存在はいません。ゼネラリストがCDPによって得ていく知識や技術は幅広いものの、その多くが自社でのみ通用するものです。つまり、自社のために確かに貢献してくれる存在であるとともに、転職のために離職しづらい存在ともいえます。
この反面、スペシャリストであればその分野においてどこへ行っても活躍できるわけであり、常に流出のリスクがつきまといます。また、専門性についてはそれを武器として業務受託している先も多いのですから、それらを利用することで組織の合理化を図ることができます。これらを考えても、会社を支えていくゼネラリストの育成は最優先すべきであるといえるでしょう。早速、適性の把握とCDPの設定に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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