もはや終身雇用など存在しないのが通念であり、転職が当たり前の時代となって随分と経ちました。
そこにワークライフバランス、働き方改革などの新たな概念が次々と取り込まれてきていますが、いずれも労働者側に優位なもので、過去よりずっと労働者に対する会社の支配が及ばなくなってきていると感じている方も多いのではないでしょうか。しかしそれは、労働者それぞれが「自立した労働観を持つようになった」と考えたほうがいいでしょう。なぜなら、誰でも手軽に知りたい情報を得られる今日、自分の働き方について適正であるのか?問題を抱えていないかどうか?いくらでも調べられるためです。そこで得た情報はその人の労働観を形成する要因となりますので、誰もがその人なりの労働観を持ちやすい環境となっています。
労働観の種類
労働観は大きく分けて2つあります。まずはキャリア志向タイプのもの、もう一方がプライベート重視のもの、です。前者の場合には、慢性的な人材不足に陥っている今日、以前より多くのチャンスが目の前に転がっています。後者の場合には、ワークライフバランスや働き方改革などのキーワードに代表されるよう国がバックアップしています。これらにどのような対応をすべきか頭を悩ませるところですが、最終的には会社が従業員に指導できることではないと気付かされます。上でも触れているよう、様々な情報を収集してそれぞれの個人が自分なりの労働観を培っていくのですから、その形成をコントロールできるはずがないためです。しかし、生産性を維持していくためもノータッチでいるわけにはいきません。会社側が従業員それぞれの労働観にフィットする存在となっていく必要があります。
多様化する労働観に対応するために必要なこと
多様化する労働観に対応するためには、ダイバーシティの受け入れと、コンプライアンス対策を徹底するのが近道です。ダイバーシティの受け入れは、多様化する労働観そのものを受け入れることを意味しています。性別や年齢に応じてそれぞれのライフステージがあり、それに合うよう個々がワークライフバランスを考えていくのですから、そこには様々な価値観が生まれます。そういった価値観こそ多様性に他なりません。コンプライアンス対策の徹底は、労働者がどのような労働観を持ったとしても、安心して働ける環境を提供するために必要です。コンプライアンスが乱れている事業体には誰も席を置きたがりません。いつ、どのようなトラブルに見舞われるのかわからないためです。コンプライアンス対策が不十分であれば、顧客や取引先をはじめとする利害関係者との対外的なトラブルや、同僚や上司との対内的なトラブルも生じやすくなり、安心して就労できないといった想いを抱くようになりがちです。コンプライアンス対策によって働きやすい環境を整備していけば、目先のキャリアだけで身の振り方を判断しづらくなりますし、ワークライフバランスも自然ととれるようになります。
自社を時代にフィットさせていく
これからも新たな働き方、その根底に芽生える労働観が生まれていくことだと思いますが、そのたびに従業員をどうにかコントロールしようとしていては逆効果です。会社以上に従業員のほうが時事に敏感であると思いながら、自社を時代へフィットさせていくことを優先すべきです。どれだけ労働観が多様化しようとも、使用者と雇用者の2つに分けられるのは変わりません。魅力的な使用者であれば、そこ雇用されたいと思う人が多くなるのは自然な流れです。そこで何が魅力的と判断されるかといえば、働きやすい環境に他なりません。自社がいかに時代にフィットできるかを考えることが、多様な労働観を持つ従業員をまとめるための最善の道といえます。