管理職となれば、いかに組織を効率的に動かしていくのかについて頭を悩ませることも少なくありません。しかし、多くの場合において組織の動かし方についての悩みを抱えているのは、一人の管理職が過度な裁量を持っているためといえるでしょう。結局、人は自分の限度を超えた裁量を手にするとどうしていいのかわからなくなるため、上位の管理職は部下にどれだけ仕事を任せられるか、与える裁量を上手くコントロールできるのかが効率的な組織の動かし方のコツとなってくるのです。
上下関係と裁量をコントロールする
組織の動かし方について、もっともイメージしやすいのが中学校の部活動かもしれません。中学校の部活動の管理は大きく2つのパターンがあり、新しく入ってくる1年生の管理を2年生が行うのか、3年生が行うのか、の2つがあります。組織全体、その組織を構成する人員それぞれがスムーズに動けるよう図るのであれば、もちろん中学2年生が新入生である1年生の面倒を直接的に請け負い、中学3年生は1年生の世話をする2年生の管理を行うのがベターです。この結果、中学3年生の負担がかなり軽減されますが組織としての意思決定に携わっていること、目先に控えた受験対策について考えると、2年生を中間管理職的に扱う考え方とするほうが、ずっと合理的であるといえるでしょう。このように上下関係と裁量をコントロールできれば、とてもスムーズに組織を動かしていけるようになります。
裁量を与えるだけではうまく行かない
しかし、雇用の流動化が進む今日、ただ裁量を与えるだけではなかなか上手くいきません。上司から見れば、裁量を与えるということはより大きなやりがいを覚えられるだろうと考えるかもしれませんが、付与された側からすれば、上司が自分の負担を軽くしたいだけであると思う可能性もあるためです。つまり、与えた裁量を積極的に活かして組織全体として動くことに貢献した社員には相応の評価をし、報酬へと反映させる仕組みとする必要があります。ここで気をつけなければならないのは、評価制度を複雑にし過ぎないことです。キャッシュアウトに直結するからとあれこれ蛇足を付けてしまうようでは、部下からの理解が得られませんので、与えた裁量を積極的にコントロールするためのモチベーション向上へとつながっていきません。
組織全体として前に進んでいきやすい環境にするために
また、それぞれが自分の裁量の範囲内で積極的に業務に邁進していくには、ビジョンを共有することが欠かせません。組織としてどのような理念を抱えており、どのような目的に一丸となって向かっていくのかが曖昧であれば、組織の誰かしらが必ずモチベーションを失ってしまい、そのような言動が垣間見えるようになります。もちろんそれは目立つものではないかもしれませんが、このようなネガティブな言動に周囲の人々はとても敏感なものであり、ちょっとした気の緩みが連鎖した結果、組織全体としての生産性の低下を招いてしまうでしょう。
一度、このようになってしまえば、元に戻すだけでも大きなパワーを必要とします。仮に、具体的なビジョンが示しづらいような場合には、各部門が目標とすべき数値を明確にするだけでも効果が期待できます。その数値にはエビデンスが伴ってなくてはなりませんが、管理者からすればそれらの結び付けはさほど難しいことではありません。加えて、目標とする数値を達成するために、どのような取り組みをしていくべきなのか、チーム単位でブレインストーミングする機会を設け、その内容を取りまとめたレポートをチームのリーダーに提出させるなどすると、メンバー全員の意識づけにもつながり、組織全体として前に進んでいきやすい環境となっていきます。