2020.01.10writer / ロココスペース

キャリアの育み 「なぜその仕事をしているのですか?」


 
「どうキャリアを育んでいくのか」というのは個人にとっても
人材育成を目指す企業にとっても、重要なテーマです。

社会人になって、1年目、3年目、5年目、10年目、20年目・・・。

「年齢とともに経験を重ね、
やりがいのある仕事をしながら、収入や社会的地位を高めていきたい。
そのためには、キャリアアップを!」
そのように考えるビジネスパーソンが多いのではないでしょうか。

一般的に「キャリアアップ」というと、
役職の変化や昇給、資格取得や技術向上など、
名刺や履歴書に書くような「外的キャリア」に目を向けてしまいがちです。

しかし一方で「内的キャリア」という視点も忘れてはいけません。

ここでいう「内的キャリア」とは「仕事の質」「人生の質」とも言える、
「やりがい」や「働きがい」のことです。
”なぜこの仕事をしているの?”の「なぜ」が
この「やりがい」や「働きがい」にあたります。

社会に出て、仕事をするなかで、人はさまざまな壁にぶち当たります。

「この仕事って意味あるの?(私の存在意義)」=価値
「任された仕事はできるけど、自分のやりたいことではない(やりがいと感じない)」=動機
「やりたい仕事に就いたけど、実力が伴わない」=能力
「やりたいことだし、かなえる力もあるけど、需要がない(経済活動ができない)」etc.

このような試行錯誤や迷いを重ねつつ働く中で、
それぞれ自分なりの答えややりがいを見いだしていきます。
この「価値」と「動機」、「能力」3つのバランスが取れ、需要がある状態になってはじめて
自分だけのキャリアが形成されたと言えるでしょう。

「働くことに価値を見いだし、心からやりたいと思え、そしてそれをかなえる力が自分に備わっている」
そのように感じられる状態に落ち着くまで、
ひとは「変わらなくなるまで変わる」と言われています。
人にもよりますが、年齢的にはだいたい35歳ぐらいがこの時期。

これらの変化は働く中で育まれるもののため、
離職すると、いったんストップすると言われています。
だからこそ、若い頃は特に、仕事を継続することが自身のキャリアの積み重ねにつながるのです。

 
しかし、転職を繰り返すなど、短期間で職種が変化する人は、
自分の価値・動機・能力が定まらず、負のスパイラルに陥る可能性があります。

頻繁に転職する人の場合、
仕事のレベルや幅、深みが身に付かないまま、常にスタート地点にいます。
長く続けることで得られる信頼や自分の存在意義(価値)を感じにくく、よって、周囲から信頼されることでやりがいにつながる(動機)といった思いも持てなくなる。
さらに、やりがいがないので「もっとできるようになりたい」と思えず、
いつまでも同じレベルで、能力が上がらない。
結果として、また仕事を変えたくなる。そしてまた転職を繰り返す。
このような負のスパイラルの状態に陥ってしまう危険性が高いのです。

負のスパイラルに陥らないためにも、一つの仕事をある程度続けるということは、内面のキャリア形成にはとても大切なこと。
同じ仕事をしていても、この内面が個々で違うため、仕事の質が変わってきます。

社会にではじめたときは、外的キャリアはあっても内的キャリアはゼロに等しい状態です。(経験や環境によって違いはありますが)

内面はみんなが同じくらいとなると、比べる点は肩書などの外的なものに目を向けてしまいがちなもの。
しかし、数年たつと内面に差がではじめます。

つまり、どのような内的キャリアを育んできたのかが、
その人らしさであり、唯一無二です。

新人の方に伝えたいのは、職種や技術だけではない外的にも内的にも「私だけのキャリア」を作っていくこと。
そのためのまず一歩として、キャリアについて考える際には、
「なぜその仕事をしているのですか?」
と自分に問いかけてみてはいかがでしょうか。

 
また、企業が中途採用をする際には、
この内的キャリアを問うような質問を投げかけることで、
成長スパイラルアップする人材を見分けられるかもしれません。